Column 02

全粒粉が健康に与える影響について

About the health effects of whole grains

日本人男女の1日あたりの食物繊維の平均摂取量は、1955年では20g以上でしたが、現在は約14gまで減少しました。この原因として穀類からの食物繊維の摂取の低下が考えられ、2015年では1955年の穀物摂取量の約1/3です。単一の食品別に見ると、食物繊維の寄与率の高い食品は精白米と食パンです。したがって、日本の食生活では食物繊維の給源は依然として穀類が重要であると言えます。以下に主要な穀類に含まれる食物繊維量を示します。全粒小麦や全粒ライ麦は食物繊維含量が高いのが特徴です。

近年になって全粒穀物の摂取は、肥満、2型糖尿病、冠状動脈疾患のリスク低減に有効とする総説(システマティックレビュー)が報告されました。さらに、朝食に全粒穀物を摂取することにより糖尿病、冠状動脈疾患のリスクが低下するという結果が報告されました。1日16gの全粒穀物摂取で全死亡リスクが7%低下、1日48gの摂取で20%低下することが示され、改めて全粒穀物摂取の重要性が示されました。また、全粒穀物の効果に関して、1日90gの全粒穀物の摂取は、冠状動脈性心疾患、心血管疾患、全てのガン、呼吸器、感染症、糖尿病、その他疾患が原因の死亡率のリスクを低下させることが示されました(下図)。なお、1日90gは、3サービングに相当します。これらの効果は、全粒パン、全粒シリアル、フスマを添加したものは有効で、精製穀物、白米などでは関係は乏しかったと記載されています。

食物繊維は、便の重量を増やし、腸内容物に通過時間を短縮し、大腸内の圧力を低下させることが、大腸の腸憩室症の予防効果に関与していると考えられています。この効果は、全粒小麦などで効果が明確です。 最近の日本人を対象とした研究で、小麦全粒粉パンの摂取は、小麦粉パンの摂取と比較して健常者の食後血糖値の上昇を抑制する効果が確認されています。さらに、 BMI(体格指数:体重(kg)÷身長(m2))がやや高めの日本人が小麦全粒粉配合パンを長期摂取すると、内臓脂肪面積が低減し、メタボリックシンドローム関連指標を改善する作用も報告されました。

青江 誠一郎

大妻女子大学家政学部食物学科教授。日本食物繊維学会理事長、農学博士。千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。雪印乳業技術研究所を経て、2003年より大妻女子大学家政学部助教授に就任、2007年より現職。2010年「大麦の食物繊維とメタボリックシンドローム予防に関する研究」で日本食物繊維学会・学会賞を受賞。

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