大麦(押し麦)およびライ麦の総食物繊維含量はそれぞれ10.3%、13.3%であり、小麦より多い。ライ麦パン(ライ麦粉:小麦粉=1:1)の総食物繊維含量は、5.6%と、小麦パンより多い。機能性食物繊維成分として、大麦はβ-グルカンとアラビノキシランの両者を含み、ライ麦はアラビノキシランを多く含む。
(1)血清コレステロール正常化作用
β-グルカンを高含有する大麦ご飯を用いて、BMIの高い日本人健常男性を対象に介入試験を行った結果、血清総、LDL-コレステロール濃度が有意に低下した(Plant Foods Hum Nutr 2008: 63:21-25)。ライ麦パンを用いた海外の実験でも、小麦パンに比べてLDL-コレステロール値の低下が示された(J Nutr 2000 130:164-70)。
(2)食後血糖値の上昇抑制作用
大麦ご飯、大麦パンは食後血糖値の上昇を抑制し、GI値の低減化に有効であることが報告されている(ルミナコイド研究 2017;21:19-23,栄食誌 2018;71:283-288)。海外の研究で、ライ麦粉で作られた朝食を健康な被験者に摂食させるクロスオーバー試験を行った結果、胚乳ライ麦パンと全粒ライ麦パンが、血糖値の上昇を抑制することが示された(Nutr J 2009; 8:39)。
(3)満腹感の持続作用
大麦を配合した食品は、胃内滞留時間が長くなるため、満腹感が持続する。さらに、大麦β-グルカンは、消化管ホルモンの分泌に影響を与え、満腹感の持続に作用し、食事のエネルギー摂取量を低減させる。朝食あるいは昼食に大麦を含む食事を食べることで次の食事の食欲が抑制されることが報告された(Plant Foods Hum Nutr 2014;69:25-330)。また、ライ麦パンと小麦パンを食べた後の食欲(空腹感、満腹感等)を8時間評価した結果、ライ麦パンを朝食に食べると、小麦パンに比べて満腹感が持続することが示された(Nutr J 2009; 8:42)。
(4)メタボリックシンドローム改善作用
β-グルカン高含有大麦と白米の麦飯を1日2パック(β-グルカン4.4g/日)摂取したところ、内臓脂肪面積が100cm2以上の男女において腹囲、BMI、内臓脂肪面積が有意に低下したことから大麦の摂取はメタボリックシンドローム改善に有効であることが示された(Nutrition 2017; 42:1-6)。海外の研究で、メタボリックシンドロームの成人を2群に分け、12週間の小麦パンを含む食事とライ麦パンを含む食事を摂取させた。ライ麦パン群は、小麦パン群よりも炎症が少なかった。炎症は2型糖尿病のリスクを高める可能性があるため、メタボリックシンドロームをすでに患っている人々の糖尿病のリスク低減に有効と結論づけた。その他、ライ麦パンの摂取は体重のコントロールに有効であることも示された(Am J Clin Nutr 2008; 87(5): 1497-50)。